なんという単ブラ
27 Sep 10

今月7日に尖閣諸島近海の日本領海に侵入し不法操業の上に、日本海上保安庁の巡視船に衝突し拘留されていた中国漁船の船長が23日、釈放されました。

こ の件で中国は海空戦力を出して威嚇する様子が無かったので、軍事以前の段階であると記事にしていませんでしたが、日本海上保安庁の撮影した中国漁船との衝 突の瞬間のビデオが有るというので、それが公開されたら記事に書く予定でした。しかしそれはもう公開されなさそうです。

こちら側に強力な 手札が有る状態で使わずに幕引きを図る行為は、それに見合う対価が得られる取引が見込める場合のみ通すべき話であり、相手が事件後に起こした対抗措置を放 棄させる目的で行う事は、相手の元手がゼロでこちらに益が無く、釣り合いが取れません。レアアース輸出規制はWTOに提訴出来ますし、フジタ社員拘束は遺 棄化学兵器処理事業の存続自体を揺るがす行為です。人質を取るような行為は人権問題とも関わってきます。相手側の手札はそれ自体に問題を抱え、それほど強 くはありません。それに対しこちら側には漁船体当たりの証拠の他に、最も強力な手札を持っていました。それは日米の軍事戦力です。

元々、 この件で私は武力衝突に発展する可能性は無いと見ていました。日本自衛隊だけでも強力な戦力であるのに更にアメリカ軍が背後に控えて居ます。アメリカは今 回の事件が起きる前の先月にクローリー国務次官補が「尖閣諸島は日米安全保障条約の対象」と明言しており、事件発生後はマレン統合参謀本部議長、ゲーツ国 防長官、クリントン国務長官、キャンベル国務次官補が立て続けに同様の発言を行っています、いえ、同様ではなく、これまでより更に踏み込んで来ました。


読売新聞9月24日朝刊1面:「尖閣に日米安保適用」
キャンベル米国務次官補は22日、読売新聞と単独会見し ~中略~ 尖閣諸島への日米安全保障条約の適用について、前提条件を付けずに「イエスだ」と明言。米国が尖閣諸島の防衛に関与している立場をこれまでよりも鮮明にした。


読売新聞9月24日朝刊2面:「日米同盟 中国に示す狙い」
米 政権の高官はこれまで、日中間で外交問題化している尖閣諸島に日米安保条約を適用するかどうか尋ねられると、領土紛争には中立の立場だと強調したうえで、 「日米安保条約は日本の『施政下にある領域』に適用される」「尖閣諸島は日本の施政下に置かれている」と”2段階論法”で説明し、安保条約が尖閣諸島に適 用されることを間接的に示してきた。

ところが、次官補は22日、安保条約を適用するかどうかとの質問に対し、「あなたが言った通りだ。イエスだ」と即答。安保条約の適用を直接的に認めた。

米政府筋は「最近の中国の動きを踏まえ、この問題では間接的ではなく、直接的に適用を認めるよう、政府の応答要領を変更した」と打ち明けた。


も ちろん、国土防衛は日本自衛隊が先頭に立って対処する事態ですが、そのすぐ後方にアメリカ軍が控えているとなれば、中国が仕掛けるにはあまりにもリスクが 大き過ぎる上に得られる対価が少なく、南沙諸島のように侵攻するのは難しいでしょう。中国側にも軍事戦力を動かす意思は見られず、現状では余裕を持って事 態の推移を見守る事が出来た筈でした。

7月にベトナムのハノイで開かれたASEAN地域フォーラムで、アメリカのクリントン国務長官は南 シナ海の南沙諸島問題に介入する意思を宣言し、その後にアメリカ海軍は原子力空母をベトナムのダナンに入港させ、ベトナム軍とアメリカ軍の合同軍事演習を 行いました。そのすぐ後に発生した東シナ海の尖閣諸島事件は、連動していると見るべきです。逮捕された漁船の船長が中国政府に命令されていたかどうかは分 かりませんが、意図的であろうと偶然だろうと中国政府はこの事件を「南シナ海で動きを見せたアメリカが東シナ海でどう出るのか」を知るために利用する事が 出来ました。この事件で中国が得た目当ての成果は日本相手のものではなく、アメリカの意思の再確認にあったのだと思います。

10月末、アメリカ海軍は韓国軍との合同演習を対北朝鮮を名目に黄海で行い、原子力空母を参加させる予定です。中国は黄海に空母が入ることについて極度に拒否反応を示しており、米中間で緊張が高まる恐れがあります。

12月には日米合同離島奪還演習が行われる予定です。中国側はこれを尖閣諸島を意識したものと受け取るでしょう。日米側もそのつもりです。

9 月末の現在、米韓合同対潜演習が始まっています。もし10月末の空母演習が今始まっていたら、かなり複雑な事態になっている筈でした。今回の尖閣諸島漁船 体当たり事件は、中国側にとって非常に絶妙なタイミングで発生し、終息しています。しかし、もしも日本が漁船の船長の拘留をもっと伸ばしていたら、中国側 は大変に頭を抱える事になっていたでしょう。

だからこそ日本政府はもう暫く様子を見るべきだったと思います。

尖閣諸島中国漁船体当たり事件の早過ぎる幕引き : 週刊オブイェクト

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